東京鼈甲組合連合会は、約1400年の歴史を持つ伝統を継承する連合組合です。
江戸べっ甲は、東京都の伝統工芸品及び国の伝統的工芸品にも指定されています。
国内最古のべっ甲製品は遥か6世紀に遡り、国宝指定されています。
数多の困難を乗り越え、悠久のかなたより日本人の魂の一部として永続しています。
昔ながらの和装から眼鏡やアクセサリーまで、
東京鼈甲組合連合会では、べっ甲の新しい価値づくりに取り組んでおります。
・普段のお手入れ方法
普段のお手入れは、眼鏡拭きのようなやわらかい布で優しく拭いて頂ければ結構です。
多少目立つ汚れ等は、普通の固形石鹸を手のひらにぬるま湯でよく泡立て、優しくべっ甲に馴染ませながら洗って頂くときれいになります。ただし、べっ甲は熱に弱いため温度には十分にご注意下さい。
艶が消えてきた場合は購入店にて「仕上げ直し」をご依頼ください。
また、べっ甲を滑らして壊さないように下に厚手のタオル等クッションになるものをお引きになるのも良いかと思います。 洗った後は、水気を取り、よく乾かしてからおしまいください。
・保存方法「虫食いにご注意!」
おしまいになる場合は、必ず桐箱やチャックのついたビニール袋にお入れ下さい。べっ甲はお洋服等と一緒で、長期間そのまま放って置くと虫食いが起こる可能性があります。虫食いと乾燥をを防ぐためにも適切な保管をお願い致します。
また年に1、2度風通しをして頂ければ、なおさら宜しいかと思います。特に冬場など乾燥しがちな時期は、適度な湿度があるところに保管して下さい。しっかりとお手入れをしたべっ甲はいつまでも美しくあなたの愛情に答えてくれます。
・不思議なべっ甲の力
べっ甲は、プラスチック等と違い破損をしても、「水」と「熱」だけを使い「圧力」をかけて“圧着”し、ほぼ修理箇所も目立たず元通りに修復が可能です。
ただし、破損した箇所が繊細な場所であったり、特殊な装飾、細工が施されている場合は“圧着”ではなく“接着”修理をしたり、場合によっては、修理が出来ないこともございます。また、破損したべっ甲の修理依頼は購入店にてご依頼ください。
べっ甲には大きく分けて3つの種類がございます。全体的に黒色のものを「黒甲」(くろこう)、黒色と飴色が混ざったものを「茨布」(ばらふ)、全体が透き通った飴色のべっ甲は「白甲」(しろこう)と言い、べっ甲の中でも大変稀少で最も高価なものです。また、商品によってはさらに細かく種類分けしているものもございます。
みなさんは「和」の装飾品といえば、まず京都を思い浮かべる方が多いと思います。ただし「べっ甲」に関しては少し違っています。みなさんもご存知だと思いますがべっ甲は長崎をはじめ、今でも東京、大阪などの地域を中心に製作されております。その中でも特に和装小物に関する歴史が古いのは東京(江戸)なのです。
その昔、徳川の鎖国時代、長崎にべっ甲細工の技術が伝来し、その後、江戸幕府の大奥文化により江戸で櫛(くし)・笄(こうがい)・かんざし等の和装小物が花開き、その技術がさらに発達、洗練されて来たのが今日の伝統的工芸品「江戸べっ甲」という訳です。
江戸の初めまでは「べっ甲(鼈甲)」は「タイマイ(玳瑁)」という呼び名でした、しかし幕府が奢侈(しゃし)禁止令を発した際にタイマイのかんざし等が「贅沢品」として禁止されました、それでもタイマイのかんざしを使いたい町民は「これは、玳瑁(たいまい)の甲羅(こうら)ではなく、鼈(すっぽん)の甲羅だ。」と偽称したのが始まりと言われております。鼈甲の「鼈」の字は訓読みすると「すっぽん」と読みます。
現代でもべっ甲製品といえば、眼鏡のフレームやかんざし等に代表されるように高価なものですが、江戸時代のべっ甲は現在よりもはるかに高価なものだったようです。実際、当時の文献には、かんざし一本で百両もした品があったと記されております。
現在の貨幣価値で一両は約六万円~八万円というのが通説ですから、百両と言えばべっ甲のかんざしがなんと!一本で約六百万円!もしたと言うことになります。特に江戸の遊女の間で「おいらん」と呼ばれる女性は、いかに華やかに魅せるかということで、競うように高価なべっ甲の髪飾りを幾つも身につけていました。とかく江戸の時代よりべっ甲は高価な品として扱われて来たようです。
今回はべっ甲に施す装飾として、大変美しい「象嵌(ぞうがん)」、「螺鈿(らでん)」、「蒔絵」、「芝山(しばやま)」についてのお話です。
まず「象嵌」とは、表面に漆(うるし)を塗りその上に物を置いて埋める技法です。
「螺鈿」とは、象嵌と同じ技法を用い、漆の上に「細かく切った貝」をモザイク模様の様に置いて柄を作る技法。貝に当たる光の加減により、べっ甲に大変豊かな表情を添えてくれます。
「蒔絵」とは、漆と金粉・銀粉・貝等を主な材料として絵模様を表す技法です。この装飾はご存知な方も多いと思います。蒔絵の美しさを十分に引き出すため、黒べっ甲に蒔絵を施したものが多いようです。
最後に「芝山」ですが、これは漆を使わず、埋める柄と同じ輪郭の凹みを彫り、そこに寸分の狂いもなくピッタリはめ込み固定するという、大変高度な技術が必要な技法です。
べっ甲は膠(にかわ)質で出来ているので漆との相性が良く、漆を利用した装飾には非常に向くという性質があります。お手持ちの古いべっ甲製品にちょっと螺鈿や蒔絵を施したりなんて粋かもしれませんね。
べっ甲の中でも「白甲(甲羅の背の部分、薄黄色に透けている)」は非常に高価なものです。
江戸時代から続く髪飾り(簪・櫛・笄)には多くの「白甲」が使われましたが、その高値から明治中期~昭和中期にかけて一般庶民向けに「牛甲」という物を代用として使用する手法が生まれました。
「牛甲」とは一般的な牛の蹄を使用しており、加工をするとべっ甲の「白甲」にとても良く似た製品が出来上がります。よりべっ甲に似せる為に製品の表面に薄く本物のべっ甲を張る「張り甲」等の技術も生まれました。現在では牛甲を利用した製品を作成する技術を持った方はほとんど見受けられなくなり、一部アンティークとして流通しているのみです。
当時はべっ甲の代用品という立場ではありましたが、今では逆に貴重な物と言えるかも知れません。
ちなみに今現在、アクセサリーショップなどで売られている「牛製品」は「水牛の角」を利用したもので、「牛甲」とはまったく別のものです。
「セルロイド」製のかんざしは、今で言うプラスチックのかんざしのようなものです。当時一般庶民向けに大量に作られたもので、またその庶民的な価格から多種多様で洒落たデザインが多く作られたものも1つの特色です。
セルロイドは発火性があることから現在の日本では生産されていません。
特別なべっ甲製品をぜひご覧下さい。
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